事件・事故

「助けてあげたかった、正しいことをした。」大阪の小6女児誘拐事件を起こした伊藤仁士容疑者とは…

大阪市の小学6年女児(12)を誘拐したとして、逮捕された自称派遣社員伊藤仁士容疑者(35)が逮捕された。

逮捕前の調べで「会員制交流サイト(SNS)で助けを求めていた子を助けてあげた。正しいことをした」との趣旨の説明をしていたことが捜査関係者への取材で分かった。

誘拐された女児は17日から行方が分からなくなる前に、周囲に「家も学校も嫌」と漏らしていたとされ、大阪府警は犯人の動機について調べを進めています。

しかし、捜査関係者によると、伊藤容疑者は当時、スマートフォンや靴を没収し、銃弾のようなものを見せて脅していたという事実も浮かび上がっている。大阪府警は女児を監禁していた疑いが強まったとして、25日午後に「未成年者誘拐容疑」に加えて「監禁容疑」でも送検する予定とのことです。

伊藤仁士容疑者は「一緒にいただけで誘拐していない」と容疑を否認しているとのことですが、女児がSNSで男の誘いに応じたからだとされているこういった事件の場合、被害者が同意して付いていったとしたら犯人は罪に問われるのでしょうか?

結論としては、同意の有無は関係ありません。

刑法では、「未成年者略取誘拐罪」についてを以下のように規定しています。

未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

この「略取」は、暴行や脅迫を手段とした場合、「誘拐」は騙したり誘惑を手段とした場合をいう。一般に誘拐と聞くと前者をイメージするだろうが、刑法は略取と誘拐を使い分けている。

したがって、19歳までの未成年相手の場合、暴行や脅迫に及ばず、甘言を弄して誘い出しただけでも、親などの監護者の同意を得ていない限りは、未成年者の同意の有無に関わりなく犯罪は成立します。

また、誘拐罪においては、犯人の動機によって、罪の重さが異なります。

働かせて金を得るなど営利目的や、わいせつ、内縁を含めた結婚、生命・身体への加害目的の場合 →懲役1~10年

身の代金が目的の場合 →無期懲役又は懲役3~20年

国外移送が目的の場合 →懲役2~20年

一方で、被害者の安全を守るため、身代金目的の犯人が、自ら被害者を安全な場所に解放した場合、必ず刑が軽減されることになっているそうです。

逮捕された男はSNSで女児と知り合って誘い出し、大阪から栃木に移動したうえで女児のスマホや靴を取り上げ、女児が靴下のまま逃走して交番に助けを求めるまでの間、自宅に住まわせていたとのこと。

また、男の自宅には、今年6月に茨城県内で捜索願いが出されていた女子中学生もいたという話です。

今後の捜査により誘拐の目的が明らかとなれば、適用される罰則が変わるかもしれない。男の自宅における生活状況などによっては、監禁罪の成立も考えられる。女子中学生に対する略取誘拐罪での立件も視野に入ってきます。

一方、未成年者誘拐罪にとどまった場合、告訴がなければ起訴できないとされているから、捜査段階で示談が成立して親が告訴を取り消したら、不起訴で終わることもあります。